天空のリィンカーティア 「白い部屋の彼女」

 ぐすりぐすりと泣き声が白い空間(へや)に響く。
 それを出している黒髪の少年は、ただ瞳から雫を零れさせているだけで何も語らない。

「どうしてまた泣いているの?」

 少年の側にいる長い銀髪の女性が穏やかに声をかける。優しい声に反応した少年は顔を上げて、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「だってみんな……おれのこと、『      』って言うんだ」

 ああ、そうか、と言葉の意味を察して歪められる顔。
 しかしすぐに穏やかな表情に変えて、女性は少年に手を差し出した。

「そう……。だったら、約束をしましょう」
「やくそく?」
「そう、約束。そうすればもう、こわくないでしょう?」

 穏やかに笑い、差し出した手を涙で冷えてしまった少年の頬に添える。手のじんわりとした優しい温かさを感じ、それに安心したのか次第に涙が止まっていく。

「だから、泣かないで」

 やっと絞り出した言葉のように、声が震えている。
 少年が女性の顔を見上げるが、その表情(かお)(うかが)えない。しかし雰囲気が柔らかく、優しさで溢れている言葉を聞いて、少年の胸にある(つか)えが下りていくようだった。

 頬に添えられた大きな手に小さい手が重ねられた時、さわりと風がふたりの髪を遊んだ。

「きみには──……」



 闇に光が降り注いで、ゆっくりと開かれていく目蓋。
 重たい身体(からだ)を起き上がらせ、窓から外を見てみれば小鳥が囀り、朝が来たことを知らせていた。

 ふう、とため息が吐かれ、その音を出した彼の瞳が虚ろに彷徨う。

「また……、あの夢……か」

 彼がたまに見る夢。
 相手の女性は耳と背中に立派な羽を生やしているが、() () () () () () () () () () () () ()。そしてそこにいる自分の姿が幼い。

 それらの事柄をよく考えてみても、〝答え〟はいつも出てはこなかった。

2024.12.31

あとがき
「天空のリィンカーティア」開始です。
漫画版とは少し違うところもある予定なので、その違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。
小説版もよろしくお願いいたします〜!
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